茨城県つくば市に建つ2階建ての医療器具の卸売り企業のオフィスである。
鉄と木の混構造による軽やかな構造形式
大きな医療器具の搬入搬出が繰り返されるこのオフィスでは、倉庫と荷の積み下ろしの際の雨除けとなる大きな庇を必要とされた。また、執務空間に加え、地域の医師たちの会議にも使えるような広い会議スペースを求められたことから、用途に対応するため、柱梁のメインフレームをスパンの飛ばせる鉄骨造とした。一方でコストの低減やインテリアの居住性の向上を意図し、床や屋根を木の小梁がルーバー状に配列される形式とした。
人や物を向かい入れるおおらかな木の空間
倉庫や執務空間のある1階は、業務の効率性を考慮した動線の短い合理的な平面とする一方で、2階は会議室を中心として諸室が並ぶ。ホワイエやバルコニーを設けることで、吹き抜けのエントランスから会議室へ至る劇場のようなシークエンスを作り出し、2階のホワイエは、室同士が天井まで伸びる開口によって視線が抜けることで木の天井が一望でき、建物の全体性を感じさせる。5m以上の天井高さをもつ木の天井が全面に広がるインテリアは、事業所でありながらも家のような温かみと公共施設のようなおおらかで用途のあいまいな空間となった。 
木の小梁は流通材の規格を使いながら継ぐことで小径の部材として屋根から建物の前面に向かって大きく張り出した庇を形成している。物の搬出入に際して雨除けとなるため、2階の屋根から庇先端に掛けて、軒高は4m程度まで落とすことで、人や物をおおらかに向かい入れる軒下空間となった。また、上下の窓を連続させた二層分の開口部と相まって、大きな平屋のようなスケールのあいまいな立面を形成している。
街のスケールのあわいとしての建築
区画整理事業が進められ、近年、事業用地や住宅地が生み出されているこの区域は、計画敷地の隣地もロードサイドの街並みと、住宅街の街並みのちょうど間にあるような街並みが形成されていた。大きな庇を携えたロードサイド型の事業用建物が並ぶすぐ裏の街区では、2階建て程度のハウスメーカーによる建売りの住宅が建ち並ぶ街並みが広がり、その異なる街のスケールの間にこの建物は佇む。ここで目指したことは、街並みの形成される直前の街の中で、固定された街並みに依拠せず、固定化したビルディングタイプを相対化するようなあいまいな存在としての建築だった。
竣工   2024.7
用途   事務所
担当   小滝健司、高藤万葉
敷地   茨城県つくば市
規模   鉄骨造(一部木造)・地上2階
敷地面積 1005.14㎡
建築面積 330.03㎡
延床面積 559.96㎡
建主   株式会社アスロメディカル
設計   建築 株式会社TOASt
     構造 オーノJAPAN
     設備 株式会社山崎設備設計
施工   株式会社三共建設
写真   中山保寛写真事務所

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