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鎌倉駅よりほど近い市街地に位置するホステル。
由比ヶ浜大通りの商店街の並びに含まれ、歴史ある街並みが残りつつ、新しい建物も軒を連ねるような新旧の混在した街において、その街並みを景観条例によって規定された敷地である。
歴史的な文脈が強く残るこの場所においては、建物が街にどのように現れるかということがこの建物の中の計画を作ること以上に、建物が街の一員となるために最も肝要なことに思われた。
そのためこの計画において強く意識したことは建物のスケールとプロポーションである。事業を成り立たせるために必要な規模から、4階建てとすることが求められたが、極力街並みから突出しないよう、一層辺りの階高を3m以下とし建物高さを12mに抑えた。
ホステルの事業モデルから、効率的にベッド数、部屋数を確保する必要があったことから、廊下などの動線を中心にまとめ、動線を最小化するコア型の平面計画としている。敷地は一面接道だが、隣地が低層の自転車屋、駐車場といった比較的開けた環境となっており、それぞれの面に対し街からの外観を意識する必要があった。外壁側が平面計画の結果として四周とも客室が配されたことで、均質な開口を全ての面で街に向けることが可能となり、街に対して、表裏のない建物の外観を作り出している。
また、景観条例による「外観デザインは、市街地を囲む歴史的、風土や周辺のまち並みと調和すること」という文言への対応として、古民家や町家が残るこの商店街がもつ庇による街並みを参照し、庇の水平要素が建物の外観の主調となっている。この庇によって上下階の壁面を分節することで、外観の重量感を軽減する効果を狙ったものでもあるが、壁面と開口の関係においても、開口を階高一杯の縦長の窓とすることで、壁面を平面的に分節している。この大きな壁を作らないよう平面的にも断面的にも分節が生まれるような操作を行うことで、軽やかな外観を作り出すことを意図した。
このような操作によって、街の景観に対して、埋没するでも際立つでもないどこか街に馴染むけれど目を惹くような両義的な佇まいを作り出すことを目指した。
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竣工 2023
用途 ホテル
担当 小滝健司、高藤万葉
規模 鉄骨造・地上4階
敷地 神奈川県鎌倉市
敷地面積 268.35㎡
建築面積 214.35㎡
延床面積 793.51㎡
建主 京浜急行電鉄株式会社
運営 株式会社Rバンク
設計 建築 株式会社TOASt、M design+Architect一級建築士事務所、株式会社swarm
構造 オーノJAPAN
設備 株式会社山崎設備設計
施工 TECRA株式会社
写真 中山保寛写真事務所